黒字転化でも憂慮される経営

日本航空は平成20年度3月期(平成19年4月1日~平成20年3月31日)の連結決算において、営業利益が192.8%増の900億円となり、日本エアシステムとの統合以来最高の数値を計上したとの報道があった。

日本航空は87年の民営化以降、内外の環境変化に対応しきれなかった日本エアシステムと統合する形で2001年新生日本航空になった。しかしかがら両社の社風や体質の違い、日本航空のお家芸とも言える労働組合との軋轢により、新生日本航空は2005年には報道されただけでも1年間に30回以上の事故やトラブルを発生させるに至る。この連続する事故をきっかけに搭乗者が激減し、2006~8年の3年間は「日本航空の経営が危ない」「再度国営化か」とささやかれるほど経営が悪化するに至る。

その墜落直前の経営ともいえる日本航空は、リストラ、不採算路線からの撤退、賃金やボーナスのカット、分社化、子会社の売却、ビジネスクラスシートの増設など、あらゆる手段を使って経営を立て直してきた。この2~3年の西松社長を筆頭にした経営陣による会社建て直し努力は、外部から見ても目を見張るものがあったと言っていいだろう。社長自ら「手探りで立ち上げたが、所期の目標は達成できた」と振り返っている。

このまま日本航空は順調に立ち直るのだろうか。私はこの再建策には重要な部分が欠落しているとみる。それは、会社がお客様、消費者、社会のために役に立っているのだという実感を社員にもたせることのできる社風なのではないか。じつはこの社風、日本航空は持った経験がない。

人件費をはじめとする経費の削減、国際線の販売力強化など財務面での改善努力は今後も必要となってくるだろう。とくに、世界の空ではLCCと呼ばれる格安航空会社が増加し、まもなく日本にも本格的に乗り入れて来よう。またこれからは機材の中型化・小型化が世界の主流でもある。その機材購入費用や旧機材の焼却費用も捻出しなければなるまい。

しかし、日本航空の財務体質が悪化したのは「安全」という輸送業にとっての最も大切な顧客との約束を軽視し、その改善が見られなかった会社の姿勢を顧客が見限ったからではなかったのか。日本航空に求められているのは、その安全を最優先し、航空会社としての存在意義を顧客にアピールできる会社の姿勢なのである。

日本航空安全アドバイザリーグループが2006年にまとめた報告書には、「過去の栄光に寄りかかる姿勢を捨て、新会社を創業する担い手になったという決意で臨む。計画段階からかかわれば、誰もが愛着を持ってベストの成果をあげようとする。」とある。官僚体質をもった「事無かれ」の社風から、まさに社員一人一人が主体となって、自ら企業文化を作る社風が待たれているのだ。