12.経済セミナー誌評

2005年11月25日 (金曜日)

経済セミナー11月号誌評

今月の特集は、「希望学」。この特集で私は初めて、「希望学」という学問をはじめて目にした。

経済学は乾いた無情なシステマチックなイメージだが、そのなかにあって「希望」という漠然としたウェットなしかし夢のあるワードが学問になっている。

どちらかというと理論から紐解くというよりも、現実から構築する学問なのかな、というイメージが強い。やや学際的な面もある。『「希望格差社会」のゆくえ』というタイトルで東京学芸大学の山田昌弘教授が書かれた一文は、一見未来予測のようであり、しかしもうすでに始まってしまっている「いい学校に行ってもしょうがないけれど、行かなかったらもっとしょうがなくなる社会」の不安を、見事に掬った文章だった。自分の中でも漠然と気がついていたけれど、文字で言われてしまうとやや衝撃的ですらあった。

山田教授は、「教育は内容以上に親の環境による差が大きい」と言う。今までは偏差値さえ高ければよかったが、これからは家庭環境における教養的、コミュニケーション的な差が大きな意味を占めるという。親の生き方、人生が影響するというのだ。

個々人が持つ希望に格差がつく社会。経済学は「効用」「分配」といった概念だけでは語れない現実に直面しているのかもしれない。

平成経済政策論争
バブルの、崩壊までの過程を検証するこの連載は、ちょうど大学での「世界経済論」の授業でバブル経済の経過を見ていることから、今月も興味深く読むことができた。昨日の新聞記事に、「大手銀行中間最終利益は過去最高」とあった。私はこれを見て、ああやっとバブル処理が終わったんだな、と実感をした。バブルとバブル崩壊による揺さぶりは、われわれ日本人に何をもたらしたのか?平成も17年となった今、この連載では、その点まで踏み込んだないようになれば、と思っている。

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2005年10月26日 (水曜日)

経済セミナー10月号誌評

特集は「戦後60年の日本とアジア」と称し、戦後を経済学の面から整理する企画であった。その中ではやはり、伊東光晴京都大学名誉教授と岩井克人東京大学経済学部教授による対談「資本主義の変質と会社の行方」は読み応えがあり、3度も読み返してしまった。両者は新古典派の出現、変容の時代の中うち、どのあたりで教育を受けたのかという時代背景に起因しているようにも見える。しかし、対談の後半で伊東教授が「ポスト産業資本主義と産業資本主義の違いはどこにあるのか」と問いかけた答えが、両者のパラダイムの違いを明確にしているように、経済学へのスタンスが明確に違っていることがわかる。一見「新旧対決」にみえるこの対談も、時代を超えた「経済学へのスタンスの差異」を見せる結果となったと読める。

今月から始まった新連載に「なぜ日本ではクレジットカードが普及しないのか」(大橋弘東京大学大学院経済学研究科助教授)は今後の展開が楽しみである。今回の連載の文末に「日本でカードが利用されないとすれば、それはカードサービスの供給側に制約があるためだ」とのスタンスで今後連載が進むものと思われる。可能であれば最近再び急速に普及を見せるSUICAなど電子マネーがなぜ急速に普及するのかが解明されると面白いと思われる。

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2005年9月25日 (日曜日)

「経済セミナー 」9月号レポート

9月号は「もっと知りたいM&A」と題した特集があった。ライブドアのニッポン放送買収を代表とする企業買収についての、経済的法的な見地からの特集である。

思えば、今年の春先までワイドショーでは、経済教室さながらの「M&A講座」が開かれていたように思う。親子逆転現象となっていたフジテレビとニッポン放送株の調整にホリエモンが時間外取引で株の買収を図る。「買収されたくなかったら株式を公開しなければいいんですよ」という彼の言葉には、乱暴さとともに資本主義の真実があり、それだけに説得力もあった。しかし日本の企業持株制度などの商慣習にはまったく迎合するものではなく、政・財界から反発を受けたのはご存知のとおりである。

『経済セミナー』の特集では、M&Aとはそもそもなんなのか?どんなプロセスでおこなわれるものなのか?どんな意味があるのか?防衛策は?といった多面的な面からM&Aを語っており、とてもバランスの取れた特集であったと思う。なかでも慶應義塾大学大学院商学研究科特別招聘教授鶴光太郎(TSURU/KOTARO)先生の文章には、「株の持ち合いはしがらみなのか?信頼関係なのか?」という日本商慣習の根本から問う問題を取り上げており、興味深かった。文中にも、「1980年台米国での敵対的買収が産業競争力低下要因とされていたが、実際には非効率なコングロマリットを徹底的に整理し、選択と集中を進め、米国再生の基盤を築いた」(要約)とし、その意義を簡潔に述べている。

9月号の背表紙にもあるように、石弘光中央大学総合政策学部教授の「いま求められる政策プロフェッショナルとは?」とのインタビュー記事は、日本のシンクタンクの問題点と進むべき方向を簡潔に述べられており、我々学生には示唆にとんだ読み応えのある文章であった。

連載の「実証的日本経済論入門」は今回で6回目となる。「傾斜生産政策という神話」と題された文章では、戦後「傾斜生産」により荒れ野原から経済復興を成し遂げたというのは本当か?という目から鱗のおちる文章であった。

最後に巻末にある書籍の紹介は、いつも楽しみにしているのだが、読む時間がうまく取れず買うに至らないのがとても惜しい。いつかは読んでいきたいものだと思う。

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2005年9月 7日 (水曜日)

「文転」のすすめ

いつも楽しみにしている『経済セミナー9月号』の伊藤元重教授の文章『文転のすすめ』が掲載されている。

経済学は数理的能力がますます求められているので、理系の人材でも自由に文系へ転換(文転というらしい)が行われるべきだ、という文章だ。

私は微分積分でいっぱいいっぱいだけど、統計学や金融論、マーケティングでさえ、数式がある。ちょっと腰が引け気味になる数式だけど、しつこく付き合って好きになって行きたい。

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2005年7月27日 (水曜日)

「経済セミナー」7月号レポート

経済セミナー7月号誌評

いつも『経済セミナー』が到着するとはじめに読むページは、「ECONの風景」だ。巻頭にあるからではなく、伊藤教授の視点を垣間見ることができるらだ。今回も紹介されていた「富の独裁者」はぜひ読んでみたいと思う。

さて、今月の特集は「夏に読むこの一冊」であった。延べ30冊の書籍はどれも興味を引くものばかりで、すぐにでも読みたくなるものばかりであった。ジャンルも経済入門型の初心者が入りやすい視点で区分けされており、どのジャンルからも入り込みやすい配慮がされていた。経済小説についてまで紹介があることに驚くとともに、経済セミナー出版部の皆さんの、『経済』に対する思い入れを感じることができ、とても親近感を得ました。

毎月楽しみにしている「平成経済政策論争」は今回で4回目の連載を迎えた。「前川レポート」に対する位置づけは、私が社会人になってからの経済政策の是非を新たにするものであり、経済政策の評価、経済史の重要性を再認識させるものです。

BOOK ANGLE-新刊書紹介」は、数ある新刊書の中から選りすぐっていただいているものと思うが、読者から書評を募集してみてはいかがでしょうか。

以上

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2005年6月26日 (日曜日)

経済セミナー6月号モニターレポート

巻頭のECONの風景は、いつも一番はじめに読んでいる。巻頭にあるからではなく、伊藤元重先生の革新、変化への対応がいかに必要なものか、どんなに大切なものかをシンプルに説いている文章が心地よいためである。

特集は「中国:経済大国への道」であった。どの文章も読み応えがあった。経済成長がすすんでいるという良い面だけでなく、国内経済格差やエネルギー問題など現在の問題点が指摘されており、また近い将来にあるであろう人民元切り下げ後の中国についても網羅されていたためだと思われる。

「平成経済政策論争」は、前川レポートをめぐる論争へ話題が移ってきた。私が社会に出た89年以降、この国は経済論争の争点がどこにあったのか、今後の連載がとても楽しみだ。
「経済学大きい小さい」も90年代の財政赤字について分析されており、最近話題の増税論議の根幹を見直せるという観点からも、時期に合った連載になっているのではないだろうか。

「実験ミクロ経済学」での完全競争の実験についての考察は、ダブルオークションを取り上げている。「国富論」でスミスが残した「神の見えざる手」が目に見えるかのような表現はとてもおもしろかった。

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2005年5月25日 (水曜日)

5月号モニターレポート

     伊藤元重先生のECONの風景

経済セミナー5月号巻頭「ECONの風景」を読んだ。伊藤元重東大大学院教授は、ライブドアの動きに関連し、「マイナスを含めて新しい動きを容認することの重要性」を述べている。平たく言えば「チャレンジ」の重要性だ。教授はハイエクの考え方を引用し、「社会全体のダイナミズムを活性化する上では、社会のあちこちに新しいことにチャレンジする人をできるだけ多く排出することが重要」としている。

現在中断している「中小企業診断士」試験の受験勉強で活用した「中小企業白書」では、現在の起業の現状を「少産多死」と表現していた。高齢化、少子化のみならず、日本の社会構造が終身雇用を前提としており、起業しにくく、敗者復活の土壌がないことによる。

このところ景気が上向いてきたとの話題をよく耳にするが、バブルから15年、設備投資の循環である13年を超えてきたことによる、需要の増大+αにすぎず、自力で飛躍するには、このチャレンジがどこまで積極的に行われるか、にかかっているのであろう。

     【特集】環境に経済学ができること

夏季スクーリングにおいて「環境経済学」を履修する予定にしており、これを専門となさっている有名な教授陣による文章を集められたことは、特集としてもとても意義深いと思います。とくに、京都議定書における日本の位置や環境税の有効性などが十分に理解でき、何度も読み返してしまいました。

     平成政策論争

履修している「経済政策学」でのレポート課題が「デフレ原因と脱却するための方策」についてであったこともあり、興味深く読みました。前川レポート的パラダイムの位置付けについてバランスよくかかれていました。次回は、前川レポートが90年代に与えた影響について書かれると思いますが、今すぐにでも読みたいという気にさせます。

     【大学では教えてくれない金融論】銀行というビジネス

銀行業を倉庫行に例え、わかりやすい文章で説明していると思います。「大学で教えてくれない」というのは、「基本的な、必須知識レベルの」という意味で使われているのだと思いますが、内容が他の記事に比べ浅く、やや物足りない読後感でした。

     【続・経済学は役に立つのか】第1回:経済政策のツールを考える(上)

経済政策学についての導入部分としての「重要な概念」について、丁寧に説明していただきました。基本知識の確認を兼ね、継続して読んでいきたいと思います。

     エコノミストの読書日記など

雑誌に掲載された書評については、現在九州大学の荒川教授などにより執筆されているが、見開き頁に2冊だけの紹介では、やや効率が悪く見えます。現在WEB上で書評を書く一般読者も多いことから、毎月何冊か書評を募ってみてはいかがでしょうか。6ページで20冊程度の紹介は可能なのではないでしょうか。また、新刊書等につきましては、御社ホームページ上で購入可能なようにならないでしょうか。せっかくご紹介いただいても、近隣の大型書店やアマゾンで購入されてしまうよりは、御社ホームページ上に掲載して購入可能なようにできればいいと思っています。

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2005年5月10日 (火曜日)

5月号:平成経済政策論争②

日本の長期定期を敷衍する注目の連載第2回である。

今回野口教授は、問題点として「政策割当の考え方が不明瞭であった」と指摘している。目標が明確でなかったという点が停滞を長期化させた遠因であると見ているのだ。

具体的には、教授自身の著書で構造改革を「構造改革の本来の目標は、市場機能の積極的な活用を通じた資源配分の効率的改善である」と定義したものの、当時の「構造改革論」では、「構造問題とはなにか、それに対処する方法はなにか」を明確にされることはなかったのである。

80年代後半から90年代初頭までに支配的であった思考様式に「前川レポート的パラダイム」というのがある。このレポートでは、政策目標を「内需拡大的各種構造改革」と「マクロ政策の国際協調」という2点におき、この目標達成は、まさにパラダイムと呼べるこの時代の共通認識となっていた。

しかし、これは1986年の小宮隆太郎氏の論文「日米経済摩擦と国際協調」(『週刊東洋経済』)により、論破されることになる。その論点は、以下の2点であった。①経常収支不均衡は市場開放によって調整できない②経常収支の黒字により諸外国に損失を与えていることにはならない。

元来前川リポートには「内需拡大によって黒字減らし」という目論見があった。しかし、この考えの根底にある、基本認識からして、経済学には誤謬であったのだ。

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2005年5月 7日 (土曜日)

【経済セミナー】5月号:ECONの風景

経済セミナー5月号巻頭「ECONの風景」を読んだ。

伊藤元重東大大学院教授は、ライブドアの動きに関連し、「マイナスを含めて新しい動きを容認することの重要性」を述べている。平たく言えば「チャレンジ」の重要性だ。教授はハイエクの考え方を引用し、「社会全体のダイナミズムを活性化する上では、社会のあちこちに新しいことにチャレンジする人をできるだけ多く排出することが重要」としている。

現在中断している「中小企業診断士」試験の受験勉強で活用した「中小企業白書」では、現在の起業の現状を「少産多死」と表現していた。高齢化、少子化のみならず、日本の社会構造が終身雇用を前提としており、起業しにくく、敗者復活の土壌がないことによる。

このところ景気が上向いてきたとの話題をよく耳にするが、バブルから15年、設備投資の循環である13年を超えてきたことによる、需要の増大+αにすぎず、自力で飛躍するには、このチャレンジがどこまで積極的に行われるか、にかかっているのであろう。

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2005年4月13日 (水曜日)

経済セミナー4月号

今月から経済セミナーのモニターがはじまりました。

4月号の感想を述べておきます。

今号の特集は、「役に立つ経済学入門」でした。
このタイトルからじつは違和感があり、「役に立つ経済学+入門:役に立つ経済学に入門しよう」なのか「役に立つ+経済学入門:経済学に入門するならこの特集が役に立ちますよ」ということなのかが明確ではなかったからです。しかし5つある文章を読んでみると、「恋愛で成功するための」「賢い消費者になるための」だったり、どれも「ための経済学」となっており、この特集のタイトルは前者の「役に立つ経済学に入門しよう」だったようです。

文章はどれも長文ではないため読みやすく、内容も読者の身近な視点に立っており、飽きさせない内容でした。その中でも、P14の「低消費時代を豊かに生きるための経済学」(東京経済大学関沢英彦教授)にあった、「十人十色の時代の中で、それぞれが求める楽しさをどう分析するかがこれからの関心事である」ということ、ならびにP18「企業の将来性を見ぬくための経済学」(立教大学山口義行教授)にあった、「消費者参加型で新しい企業の将来像が作られつつあるのであれば、経済学は市民による自覚的な社会参加・社会形成過程をも取り込んだ、より幅広い社会科学へと発展していかなければならない」という点には、同感するとともに有用な示唆であったとおもいます。

それから、今号より新連載として「平成経済政策論争」が開始され、興味を持ちました。専修大学の野口旭教授が「経済学の役割のひとつは、その知見の政策的利用による経済学の改善にある」とし、「停滞の十数年間に行われてきた日本経済を巡る論争を現時点から振り返り、一定の観点から明確な評価を加える」としています。この連載記事は、毎号かならず熟読していきたいと思っています。私はバブル崩壊直前の89年に社会人となりました。私にとって「失われた10年」は、実社会での経験しかありません。そこに経済学というフィルターを通し、再度検証してくれるという記事は、とても興味深いものです。

ちなみに経済セミナーは、発売日が27日に変更となっています。

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